家づくりと身近な法律

家づくりと身近な法律 / 司法書士 平田輔先生

遺言と遺留分

 皆さん、こんにちは。遺言作成を考えた場合、どうしても死を意識してしまい、「死ぬことを意識したくない」とか「まだそんな時期ではない」とか、色々な理由をつけて、遺言の作成をされない方が多くいます。

しかし、「死」はある日突然、予告もなしに訪れます。遺産による争いは長ければ十数年に及ぶこともあり、仲のよかった親族が遺産を巡って分裂することもよくある話しです。遺言は、遺された方へ贈ることができる最後のラブレターです。

そこで、今回は「遺言と遺留分」をテーマにして、「遺言」について簡単にお話し、遺言とは絶対に切り離すことのできない「遺留分」について簡単にご説明させて頂きます。

1.遺言とは

1.遺言の種類
 普通の方式による遺言の種類として、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がありますが、秘密証書遺言はあまり利用されていないため、ここでは、自筆証書遺言と公正証書遺言についてご説明します。
2.自筆証書遺言と公正証書遺言のメリット・デメリット
①費用面
自筆証書遺言は作成するのに費用はかかりませんが、公正証書遺言は遺言の内容や遺産額に従って、公証人の手数料がかかります。
②遺言の有効性
自筆証書遺言も公正証書遺言も効力としては同一ですが、自筆証書遺言の場合は、遺言者が遺言書を作成した当時、既に認知症であったような場合、遺言の有効性が争われることがあります。
また、遺言を作成した者が遺言者本人であるか否かも争われる可能性があるなど、遺言の有効性が問題になるケースがあり得ます。これに対して、公正証書遺言の場合には、公証人が遺言者の面前で本人確認を行い、遺言内容について遺言者から聞き取りをしますので、有効性が争いになることは殆どありません。
③遺言検認の必要性
公正証書遺言は検認の申立は不要ですが、自筆証書遺言の場合には、家庭裁判所に検認の申立をしなければならず、検認の申立をしない場合には、過料が科せられることがあります。
④遺言の方式
自筆証書遺言の場合には、遺言の方式が民法に定められており、遺言の方式を満たしていなければ、遺言は無効となります。これに対し、公正証書遺言は、公証人が作成しますので、遺言の方式を気にする必要はありません。
⑤遺言が見つからないケースが有り得る
自筆証書遺言は、本人が保管をする可能性が高く、事前に相続人に伝えるなどしていなければ、遺言書が見つからない可能性があります。
これに対し、公正証書遺言は、公証役場に保管されていますので、公証役場に相続人が照会をすれば、遺言内容を確認することができます(ただし、遺言書の確認は死後に限ります)。

 以上のように、費用の点を除けば、公正証書遺言の方がメリットが多いため、遺言書を作成される場合には、公正証書書遺言をお勧めします。

3.遺言の撤回

 遺言は一度作成をしても、その後、新たな遺言書を作成することで、何度でも撤回することが可能です。遺言書は最後のラブレターではありますが、変更は可能ですので、万が一の備えとして、気負うことなく作成されて下さい。

2.遺留分とは

 遺留分は、一定の相続人に対して、必ず認められる相続分です。遺言の内容が遺留分を侵害する内容であれば、遺留分の範囲内で、遺留分権利者(遺留分を主張する者)に対して遺言の効力を主張することができません。

 従って、死後の争いを防ぐためには、遺留分を考慮したうえで、遺言を作成することがとても大切です。

1.遺留分の割合

 遺留分は、妻・子・親に対して認められ、その割合は法定相続分の2分の1と定められています。なお、兄弟姉妹には遺留分はありません。

 したがって、妻及び兄弟姉妹が法定相続人の場合、妻に全ての遺産を相続させても、遺留分の侵害はなく、死後、遺産で争いが生じることもありません。

2.具体的な遺留分
①相続人が妻及び子ども一人のケース
妻の遺留分は4分の1、子の遺留分は2分の1
②相続人が妻及び両親のケース
妻の遺留分は3分の1、両親の遺留分は6分の1
③相続人が妻及び兄弟姉妹のケース
妻の遺留分は2分の1、兄弟姉妹の遺留分はなし

※このケースは兄弟姉妹に遺留分がない結果、妻には遺産の2分の1の遺留分が認められています。

 最初に述べましたように、遺言は遺された方に贈ることのできる最後のラブレターです。せっかく遺言を作成しても、死後に相続人の方が紛争しては遺言をする意味がありません。
遺言作成にあたって遺留分を十分考慮されたうえで、作成をされて下さい。

 次回は個人信託についてお話しさせて頂く予定です。

2015年7月29日 掲載

家づくりと身近な法律 / 司法書士 平田輔先生

相続人は誰でしょう?

 皆さん、初めまして。私は、北九州市小倉北区で司法書士事務所を経営している司法書士の平田輔(ひらたたすく)と申します。売買や相続を原因とする不動産登記、会社関連の商業登記を主な業務としています。これから、数か月に渡り、皆さんのお役に立てる情報をお伝えできればと考えていますので、今後とも宜しくお願い致します。

 家を建てられたら、将来、相続人が相続することになりますが、そもそも相続人とは誰なのか、それが今回のテーマです。

1.法定相続人とは

「法定相続人」という言葉を耳にしたことがあるという方は沢山いらっしゃると思いますが、「法定相続人」の意味はご存知でしょうか。法定相続人とは、民法という法律で定められた相続人のことをいい、遺言がなければ、亡くなられた方の財産は法定相続分(民法で定められた相続分)に従って分配することとなります(ただし、遺産分割協議を行うことにより、法定相続分以外の割合で相続することは可能です)。

 では、実際に誰が法定相続人になるのか、ケース別にお話をさせて頂きます。

2.亡くなった方に子供がいる場合の相続人

ケース1妻及び親がいる場合
妻及び子供は常に第一順位(もっとも優先される)の相続人となり、妻の相続分が2分の1、子供の相続分が2分の1となります。仮に子供の人数が3名だとすると、妻が6分の3(2分の1)、子供が各自6分の1(2分の1を3名で分ける)を相続することとなります。
妻及び子供がいる場合、親は相続人にはなりません。
ケース2妻がおらず親及び兄弟姉妹がいる場合
ケース1で述べたとおり、子供は常に第一順位の相続人ですので、この場合、子供が全ての遺産を相続します。仮に子供の人数が3名だとすると、各自3分の1を相続することとなります。 親及び兄弟姉妹が生きていても、親及び兄弟姉妹は相続することができません。

3.亡くなった方に子供がいない場合

ケース1妻、親及び兄弟姉妹がいる場合
妻は前述のとおり、第一順位の相続人ですが、子供がいない場合には、妻と親が相続人となり、妻の相続分が3分の2、親の相続分が3分の1となります。なお、両親共に生きている場合には、親の相続分が各自6分の1となり、妻の相続分は減りません。また、兄弟姉妹は、相続人にはなれません。
ケース2妻及び兄弟姉妹がいる場合
親は既に亡くなっており、妻及び兄弟姉妹のみの場合、妻の相続分が4分の3、兄弟姉妹の相続分が4分の1となります。兄弟姉妹が仮に3名だとすると、兄弟姉妹の相続分が各自12分の1となり、妻の相続分は減りません。
ケース3兄弟姉妹3名の内、2名が亡くなっている場合
妻がおらず親も既に亡くなっている場合、兄弟姉妹が相続人となります。
兄弟姉妹3名のうち、2名が亡くなっている場合、亡くなった兄弟姉妹に子供がいれば子供が代襲相続することとなり、生存中の兄弟姉妹及び亡くなった兄弟姉妹の子供が相続人となります。
たとえば、亡くなった方に3名の姉がおり、長女及び次女が亡くなっているとします。長女には子どもが二人おり、次女には子どもがいないとした場合の法定相続分は、長女の子供が各自4分の1、三女が2分の1となります。次女は既に亡くなり、子どもがいないため、相続分はありません。

 相続税の基礎控除額は、法定相続人の人数によって増減しますので、誰が法定相続人なのか、何名の法定相続人がいるのかということは、相続税を考える上でも、とても重要です。また、遺言がない場合には、遺産は、法定相続分に従って分配をすることが原則となりますので、遺産を分配するうえでも、法定相続人が誰なのかということは、とても重要な要素です。皆さんのご家族に置き換えて、誰が法定相続人になるのか、考えてみては如何でしょうか。

 今回は法定相続についてお話をしましたが、遺言がある場合には、遺言が優先します。そこで、次回は「遺言及び遺留分」をテーマに、簡単にお話をさせて頂く予定です。

2015年3月30日 掲載